2008/08/03()天候晴れ時々曇り~雨 旅行二日目

「ひろしま~、ひろしま~」。駅の構内放送で目が覚める。駅名標は「広島」、高校の修学旅行以来だ。
時刻は05:21定刻だ。車内放送は無い。開放Bも静かに寝息を立てている区画が多い。
広島駅で降りたお客さん数人が窓から見えた。
まだ辺りはかなり薄暗くカメラのISO感度を上げないと、まともなシャッター速度が稼げない。

広島の駅名板。
いつの間にか山陽本線に
入っている。
寝静まる開放B寝台。
満席状態。

広島を出て岩国へ向かう頃だろうか、東の空が見る見るうちに明るくなっていく。
日の出を撮りたいのだが、なかなか良い構図にならない。
もたもたしている間に太陽が顔を出してしまった、雲も多い。お世辞にも綺麗な朝焼けとは言い難い状況だ。

どうにか撮れた瀬戸内海の朝日。岩国付近にて。電線がなぁ。

私もまだ眠い。車内の冷房ですっかり冷えてしまった体に、熱いコーヒーでも欲しいところだ。
そうこうしている内に、寝ている人を起こすかのように「おはよう放送」が入る。ハイケンスのメロディーは無しだ。
おはよう放送はこちら(2:38)

さて、外を見ながらマッタリしていると、早くも新山口に到着だ。寝台列車は時間が流れるのが速い様な気がする。
ふと窓の外に目をやると、あの「サロンカーなにわ」が停車して居るではないか。
すぐさまカメラを構えるが間に合わず、大サロは視界の外へと流れていってしまった。
その代わりと言っては失礼だが、厚狭駅(だったと思う)に「おいでませやまぐち号」のキハ58+28が止まっていたので撮影した。

厚狭駅に停車中の
「おいでませやまぐち号」。
オハネのガラスの汚れがなぁ
娘の猫と方位磁石。
西へ西へと進む寝台列車。


いよいよ、降車駅の下関に到着。我々が降車すると、急いで機関車を付け替えて出て行ってしまう寝台列車がいささか淋しかった。
「また帰りに乗るからよろしくなぁ」と心の中でつぶやいた。

もう朝食の時間はとっくに過ぎていたが、子供達は寝台列車の中で昨日購入したおにぎり等を食していたため、空腹ではないようだ。
私と妻は下関の「ふく天うどん」が食べたいが為、下関に到着するまで我慢していた。
早速、ホームの売店に行き「ふく天うどん」を二人前注文。一人前490円也。
待つこと数十秒、待望の「ふく天うどん」が出てくる。ネットで見たのと同じだ。満を持して「頂きま~す」と薄味のつゆのさっぱりさに感動。
しかし、しかしだ。ふくの天麩羅が妙にしょっぱい。つゆが薄味の分、具は塩分濃いめにしてあるのか?
正直、このアンバランスさに評判ほど美味しくないなと感じたのは私だけであろうか。
こうなるとカモンワーフまで行って、「ふく焼き」や「ふくバーガー」も食べてみたくなる。
だが、今回はスケジュールの都合上、下関でゆっくりしている時間は残念ながら無い。いつの日か、本州端の街も観光してみたいものである。

それはさておき、食べ終わったうどんの容器を売店に戻すと一個あたり20円が返金された。
ちょっぴりエコなこのシステム、ビールやコーラの空き瓶を酒屋に戻すと返金された、
昔のシステムによく似てる。最近は巷にこういう仕組みが無いのがちょっぴり残念だ。
あの頃は小遣い欲しさにその辺のビール瓶を集めまくった物だが。

次に乗る列車・・・「みすゞ潮彩」号は、どうせならと新下関からの乗車にしてある。
だから下関から新下関まで山陽本線を戻らねばならない。
どうせ、下関で待っていても2時間も近く暇なのだ。ならば山陽本線に乗って少しでも時間を潰そうではないか。
下関から新下関までは電車で3駅。下関~播生(はたぶ)~新下関だ。
移動用の列車を待っている間、ホームに山口色のキハ47を見かけた。私はこの色のキハを見るのが初めてである。
JR東日本では見かけないような斬新な色使い、旧型車両ながらとても新鮮な気がした。
ただ、ディーゼル車とは言え、もうちょっと小奇麗にしてもらえたらなぁと言うのが正直な感想だ。
ディーゼルのススで酷い汚れだ、残念。

下関駅に停車中のキハ47と下関の105系。105系は新広島色。
キハ40系の広島色を見ただけでお父さん興奮気味。

そして新下関に到着。新幹線と在来線が交差している駅だ。
予想よりも寂しげな駅で、イメージとは大分違った。もっと派手やかな雰囲気を想像していたのだ。だって「新」でしょ。
案内に従って「みすゞ潮彩」の乗り場へ行く。なんとも薄暗い新幹線のガード下だ。
「え~と、指定席車両の乗り場は・・」なんとホームの端っこである。
有料指定席列車の乗り場が薄暗いガードの下を通った先のホームの端っこである。
「大丈夫なのか?」といささか不安げになる。と思った矢先、反対車線を回送のみすゞ潮彩号が通過しようとしているではないか。
慌ててカメラを構えて撮影は出来たものの、平均測光では車体の明るい部分が飛んでしまうことを忘れていた。
液晶画面で画像を確認したときに、ヒストグラムが大分オーバー寄りになっているので「やっちまったぁ」と落胆した。
新下関駅のみすゞ潮彩号案内板。
一応快速列車
案内があるのは助かるのですが、
どんどん人気のない場所に・・
新下関駅の時刻表。
「みすゞ潮彩号」は色違いで
運行上は優等列車扱い。
みすゞ潮彩の観光用マップも、
なぜか薄暗い場所に・・
新下関駅名板
便所の前だしなぁ・・。
そして指定席乗り場は
更に奥のホームの端っこへ。
やってしまった失敗例。
明るい車体はマイナス補正を
お忘れ無く。
新下関駅構内に咲いていた、
見事なヒマワリの群生。
夏ですなぁ。


それから数分、今度は乗客を拾うべく、我々の待っているホームに入線してくる。
実物を見ての感想は「派手だな」の一言に尽きました。私はアールデコの概念がイマイチ理解できていないので、
この「みすゞ潮彩号」のデザインは何とも言い難いところでもあります。
それでも今日最初(今回の旅行でも最初)に乗る「キハ」なので、気分は「キハようございます」と言ったところか。

今度は広角で。「新下関」と言っても
在来線のホームは草ぼうぼう。
ローカルですな。
まずは望遠で圧縮。
編成の短さを感じさせない
デザインです。

さていよいよ乗車ですが、ドアの脇に一人の方が立っておられました。
この方こそ「みすゞメイト」(メイドじゃないよ)なるスタッフの方で、車内で紙芝居等のイベントを行っております。
大きなフレームの真っ黒いメガネ。みすゞ関連の列車なので「林芙美子」かと思いましたよ。

我々が乗った指定席は18番と19番のADの4席。

みすゞ潮彩1号の指定席券。
屈辱の18番。
出発前のサイバーステーションでは
空席がありますが、乗車当日は
満席でした。
新下関~仙崎で検索すると、
なぜかエラーが出る

一番眺めのいい席は12番・14番・16番のAD。本当はその席が欲しかったのですが、
キャンセル待ちをかけても結局最後の最後まで回ってきませんでした。
乗車してみて判ったのですが、眺めのいい席に座っているお客さんはみんなツアー客。
ガイドさんと一緒に搭乗していて、みすゞ潮彩弁当付きのツアーです。

こちらは18番の席。
三歳の息子で丁度良い大きさ。
視野の狭さに感動(泣)
ツアー客が座っている16番の席。
写真奥に向かって14番、12番。
素晴らしい展望だ。

正直、混雑期のツアーによる席押さえは遠慮して欲しいですな。
自分が乗りたい席のチケットくらい自分で確保してくれよ。ってのは「鉄」の一方的な考え方かな(笑)
それでも「もしかしたら途中、どこかの駅で降りてその後、我々が16番に座れる可能性も」って考えていたんですが、
結局そのツアー客の団体は終点の仙崎まで乗車し、特等席が空く事はありませんでした。残念です。

みすゞ潮彩号の中には売店があり、みすゞメイトのお嬢さんがメイド服を着て営業をしております。
車内でしか買えないみすゞのグッズや、山陰西部(山口県)の特産品や飲料、おつまみ等を扱っており、
ここぞとばかりにオリジナルみすゞグッズをヲタ買いしてしまいました。

これもヲタ買いのどら焼き。
「巌流焼」と「おそいぞ武蔵」
凄いネーミングだ(゚∇゚ ;)
ヲタ買いしたみすゞ潮彩号
オリジナルのストラップ
一個500円也

それと「ディスティネーションやまぐち」の期間中だけ特別なプレゼントがあり、我々も頂くことが出来ました。
ひとつはみすゞ潮彩号が印刷してある団扇。下関の花火大会と相俟ってカラフルです。
もうひとつは「みすゞ潮彩号オリジナルハガキ」。仙崎の郵便局からでも出しましょうか。
最後のひとつは「はまゆうの種」。植物の「はまゆう」の種なんですが、これがスピードくじ付き。
何と言ってもこういう所でくじを当ててしまうのがウチの娘の運の強さ。見事に当たりました(笑)
駄菓子とかアイスでも良く当たるもんね。この調子で帰りのやまぐち号のスピードくじも頼むよ、我が娘よ。

スピードくじの賞品は尾崎眞吾さんのイラストが描かれたカレンダー。今は8月で、今年もあと5ヶ月弱しかないのにカレンダー?
って思ったら、その内容は2008年の8月~2009年の7月までの内容でした。お見事。
なかなかのレア物をゲットできて娘も喜んでいました。
ちなみに我が家族の他の三人は凡退。ホント、くじ運無いね(笑)

オリジナルのハガキ。
旅行中に出さないと、
永遠に出番が無さそうです。
乗車記念の「はまゆうの種」
みすゞ潮彩号用の作製でしょうか?
気合い入ってますね。
オリジナルのうちわ。
花火大会では沢山
配ってそうですな。
種の箱の裏面です。
みすゞ賞「当たり」と
なっています。
賞品のオリジナルカレンダー。
尾崎さんのアトリエは
長門市にあるそうです。
はまゆうの種。
種にしては大きいです。
球根のような種です。

話を列車に戻そう。この「みすゞ潮彩号」、観光用に長門市と下関市が合資で改造したものだが、
室内を見回すとどうしてなかなか奇麗に(指定席車両は)改造されているではないか。
一つ言わせてもらうと、全席海側を向いているのは良いのだが、どうせ改造するのなら席の位置と窓の位置は合わせて欲しかった。
指定席料金は一緒なのに、席番によっては非常に景色が見づらい。今回の18番の三角窓なんて圧迫を感じるほど視野が狭い。
下手をすれば自由席の車両より不満な部分も無いとは言えなさそうだ。
多額の改造をするのだからもう少し考慮の余地が有ったのではないかと思う。

さてさて列車はいつの間にか走り出している訳だが、気がつくと「川棚温泉」の駅に停車している。
地元の小学生達によって整備された花壇がお出迎えだ。「奇麗な花を見ると腹が減る」なんてどこぞの漫画のセリフにあったなぁ。
なんて思ってたら本当に腹が減ってきた。
昼食には丁度いい時間なので先程車内の売店で購入した「みすゞ潮彩弁当」を頂こう。
包装紙に尾崎さんのイラストを使った駅弁である。何度かイメチェンをして現在の形に落ち着いたようだ。
中身はと言うと、海の幸をふんだんに使い、カラフルな仕上がりになっている。仙崎に因んで今では珍しい「鯨肉」まで入っている。

みすゞ潮彩弁当包装紙
川棚温泉駅とみすゞ潮彩弁当。

肝心のお味の方はと言うと、正直期待外れだった。素材にこだわるのは良いのだが、それぞれの素材を生かしきれていない感がある。
どれもこれも中途半端な味付けで統一性が無い。
不味くは無いのだが、この弁当を総合的に「美味しい」と言うお客様はなかなか居ないだろう。
まあ、この列車に乗った時の「記念弁当」と言った所だろうか。

そうして弁当を食べている内に、みすゞ潮彩号のイベントでもある「ビューポイント停車」一回目だ。
写真でもあるとおり、日本海の素晴らしい展望が望める。
しかし、しかしだ。この日に限って天気が悪い。新下関を発車した頃は晴れていたのに、
段々と北上するごとに怪しい雲行きになってきた。最初のビューポイントの頃には、空から雫がポツリポツリと。
パンフレットで「ふるさとの海は蒼かった云々」なんて書いてありますが、今の日本海はさながら鉛色。
低~い雲がどんよりして、三角形の波が荒れている日本海。季節こそ違えど、昔12月に行った五能線のような景色だ(笑)
結局この日は、仙崎に着いても晴れることは無く、みすゞ潮彩号の売りである「蒼い日本海」は「鉛色の日本海」で終わってしまったのである。
まるで金子みすゞの詩「海とかもめ」の様である。

金子みすゞ「海とかもめ」(原文通り)

海は青いとおもってた。
かもめは白いと思ってた。
だのに、今見るこの海も、
かもめの羽(「羽」は原文では旧漢字扱い)も、ねずみ色。

みな知ってるとおもってた。
だけどもそれはうそでした。

空は青いと知ってます。
雪は白いと知ってます。

みんな見てます、知ってます。
けれどもそれもうそかしら。


第二ビューポイント、
宇賀本郷~長門二見間。
電線と道路が鬱陶しいので
カットしました。
第一ビューポイント、
小串~湯玉間。
鉛色の日本海が荒れている。
第三ビューポイント、
黄波戸~長門市間。
これも電線と道路が鬱陶しいので
カットしました。
第二ビューポイントの夫婦岩。
窓に顔を押しつけないと
視界に入ってこない。
ビューポイントには専用の停車板が、
設置されています。
晴れていれば綺麗なんだろうなぁ。
人丸駅の駅名板。
窓に雨が着いているのが
お分かり頂けるだろうか。

阿川駅を過ぎた辺りで休祝日だけの車内イベント「紙芝居」が始まる。
我々は18番・19番の席なので紙芝居に関してだけは特等席だ。
しかし我が息子は昼食の後、鉄道の心地よい揺れに誘われて爆睡している(笑)

内容は「童謡詩人 金子みすゞ」。金子みすゞの生涯を簡略的に説いた紙芝居なのだが、
語り手のレベルが高いせいか、真剣に聞き入ってしまう。後部座席の方からは「きこえませ~ん」との声も。
基本的にキハ47はディーゼルエンジンの騒音が大きいせいか、車内で紙芝居を行うのは大変だ。
拡声器があるとは言え、鉄道の走行音に立ち向かうのは簡単なものじゃない。
画調もほのぼのとしていて子供でも十分楽しめたようだ。終わりには乗客からの拍手が沸き起こった。
これに対して上りの「みすゞ潮彩2号」の紙芝居内容は劇画タッチの「武蔵と小次郎」。
親として子供に見せていいものかどうか戸惑ってしまったので、みすゞ潮彩号は下りの1号にしたのだ。

さて列車は山陰本線の「長門市駅」に到着。ここでは時間調整で6分間の停車。
みんな写真の撮影で大忙しだ。かく言う私もみすゞ潮彩号をカメラに収めるべく、家族を置き去りにして降車した(苦笑)。
撮影内容に関しては以下の写真でどうぞ。さすがに「おいでませやまぐち号」のホームまで走っていく度胸は無かったので
遠くからの望遠撮影に止めさせてもらった。

長門市駅に停車中の「おいでませやまぐち号」
国鉄色だが当時より赤色が濃いような気がしますが・・。
アールデコを採用した独特のデザイン
奥にはみすゞメイトさんと売店が。
みすゞ潮彩号からキハを見つめる
娘の猫(笑)

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